ToHeart2 [詳細]>姫百合珊瑚・姫百合瑠璃 [詳細の詳細] |
姫百合珊瑚・姫百合瑠璃レビュー。 出来事を時系列に並べてレビューしてみる。
1.珊瑚の決意:
珊瑚は少し変わった子だった。
その個性は後にHMX-17aの開発という偉業を成し遂げる素晴らしい才能なのだが、まわりのみんなとはどこか違って動きも遅い珊瑚は当時の子供たちにとって「変なやつ」としか映らなかった。そして珊瑚はいじめに遭う。それを放っておけない瑠璃。「自分が珊瑚を守る」――それが瑠璃の決意。 瑠璃はいじめっ子を撃退できない珊瑚を守るうちに自分たちのまわりに誰も寄せつけなくなり、気がつくと瑠璃の傍には珊瑚だけがいた。瑠璃は友達を失ってしまった。 珊瑚は瑠璃に友達がいなくなったのは自分のせいだと思い、考えた。「瑠璃に友達を作ってあげる」――それが珊瑚の決意。 だが、瑠璃は友達なんか求めていなかった。 「珊瑚をいじめるかもしれない人なんか友達じゃない。珊瑚さえいてくれればいい」――それが瑠璃の気持ち。2人の心はすれ違い始めていた。 そして珊瑚は後に瑠璃の友達になれるロボットを完成させる――HMX-17a イルファ。
2.HMX-17a イルファ:
HMX-17a イルファとはどんなロボットなのか。
3.微笑のすれ違い:
初期のイルファは言語解析仕様の不具合により動作がぎこちなく失敗作扱いにされ、ずっと眠ったままにされていた。
人間がイルファを眠らせていただけではなく、イルファ自身も満足な動作ができない自分が外界へ出て行くことに恐怖していた。
快・不快を判断して感情を成長させるからこそ獲得してしまった負の感情、恐怖。外界へ連れ出そうと珊瑚がイルファを誘うこともあった。何度もあった。だがイルファは怖い。怖くて動けない。
拒否するイルファに珊瑚も無理をさせることはできず、訪れては去っていくの繰り返し。イルファは恐怖から逃れられずにいた。また誰か来た。そう思ってイルファは目を向ける。そこにいたのは珊瑚――によく似た瑠璃。瑠璃はイルファを連れ出しに来た。だがイルファの恐怖は変わらない。やはり外界へは出て行けない。拒絶。 だが瑠璃は違った。珊瑚のようには諦めず、瑠璃はイルファを外へ引っ張り出してしまった。あのままでは暗い世界に閉じこもったまま壊れてしまったかもしれない。 そう思ったイルファは無理にでも外へ出して自分を救ってくれたくれた瑠璃に感謝していた。 珊瑚は泣いていた。イルファが外へ出てきてくれないから。それを見ていた瑠璃。瑠璃にとって珊瑚を泣かすものは許せなかった。だから瑠璃はイルファを連れ出した――珊瑚のために。 イルファもまたそのことを知ってしまったが、それでも自分を恐怖の暗闇から解き放ってくれた瑠璃に純粋に感謝し、そして瑠璃のことが好きになった。イルファは瑠璃の珊瑚に対する優しさが密かに好きだった。 しかし……。
4.イルファの決意:
イルファはもうすぐ新たな役目を負う。それは……瑠璃の友達。うれしい。うれしい……はずなのに、イルファは複雑な判断を求められていた。イルファにとって瑠璃は恩人。忘れることのない、大好きな、大切な人。
瑠璃のそばにずっといられることはうれしい。でも瑠璃は珊瑚のことが好き。珊瑚も瑠璃が好き。自分が瑠璃のそばという居場所を取ってしまったら、珊瑚と瑠璃の繋がりの中へ割り込むことになってしまう。
珊瑚と瑠璃がお互いに好き合っていることは知っているし、そんな2人がイルファも好きだった。その繋がりを壊すことはできない。
そしてイルファはひとつの決意をする。ずっと瑠璃のそばで接していて、2人の繋がりを壊さない居場所――メイドロボになることを。
5.出逢い:
成績優秀な珊瑚は上位ランクで、そっち方面がちょっと苦手な瑠璃はギリギリで、高校入学を果たした。珊瑚は学校のコンピュータ室に通い詰め、瑠璃はそれについて回る日々。
瑠璃にとっては珊瑚がすべて、珊瑚がいてくれればいい。高校に入学してからも瑠璃に友達はいなかった。4月12日の朝。猫を助けようとした珊瑚が塀から降りられなくなって困っていたら、そこを通り掛かった男の子が気がついてくれたみたい。 ――たぶんこの人はいい人だ―― 珊瑚の直感。珊瑚には瞬時にいい人を見抜く、というか感じる力があるみたい。珊瑚は決めた。瑠璃に人間の友達を作ってあげることを。 彼の名は河野貴明といった。ん……どこか少しぎこちない。どうやら女の子が苦手みたいだ。でも大丈夫。助けてくれたんだし。そうそう、助けてくれたお礼のキス。あげる。みんなで仲良くしよう。 しかし瑠璃は珊瑚の思惑など意に介さない。珊瑚に近づくものはみんな敵。貴明は絶対に珊瑚には近寄らせない……瑠璃の決意。 それから……たくさんのことがあった。楽しいことも、寂しいことも、喧嘩することも……。
6.衝突と氷解:
イルファが家へ来た。瑠璃の友達を作る……珊瑚の約束の成就のとき。やって来たイルファはロボット――その中でもメイドロボ。でも家事は瑠璃の居場所。珊瑚のそばにいられて、珊瑚を守れて、珊瑚の役に立てる。
そうして導き出された結論は家事。家事という名の「珊瑚の隣」は瑠璃にとってのすべてだった。自分の居場所を奪いに来たやつが友達なんかのはずはない。瑠璃は猛然とイルファを追い出しにかかる。> 「こんなの友達なんかじゃない。友達のフリをしている人形だ」 怒鳴る。怒る。わめく。でもまわりはわかってくれない。信じていた珊瑚までもが瑠璃を説得にかかる。 > 「さんちゃんなんか……死んじゃぇ……っ!!」 言ってはいけない言葉。そのとき瑠璃に手を上げたのは……イルファだった。どんなに自分のことを言われても耐えていたイルファ。だが瑠璃が珊瑚を呪ったとき、そのイルファが手を上げた。 安全性を考慮して「怒り」というものがプログラムされていないはずのロボットであるイルファ。 そのイルファが「怒り」を感じて手を上げたということは、プログラムによる感情経験の蓄積により成長したイルファが人と同じ「怒り」を感じる力――心を持ったという証だった。 瑠璃は失踪した。漸く見つけ出した貴明の話も聞いてくれず、自信をなくした瑠璃はひたすら自分を否定するばかり。
――キス。 言葉よりも強く、心を語るものがそこにあった。
7.心というもの:
家に戻ってきた瑠璃はイルファからすべての話を聞いた。最初の自分は失敗作扱いだったこと、暗闇の中で落ち込んでいたこと、瑠璃が手を引いて外へ連れ出してくれたことが嬉しかったこと、
珊瑚と瑠璃の繋がりを壊さないためにメイドロボの道を選んだこと……イルファのすべてを。
そのとき、瑠璃が本当に優しい子だということがみんなにもはっきりとわかった。泣くことのできないロボットであるイルファのために瑠璃は泣いていたのだから……。漸く珊瑚とも本心で通じ合えた瑠璃。その姿を見てイルファは言う。 > 「心があるから痛みや喜びを知ることができるんじゃない。痛みや喜びを知って、心が生まれるんですね」 珊瑚と瑠璃。長い間2人の微妙な関係を支えていたのは互いの強い思いではなく、いつ崩れてもおかしくないようなすれ違い合う認識や努力だった。 心がわかり合えた今、珊瑚と瑠璃、そしてイルファと貴明もきっとこれからはもっと強く繋がり合えることだろう。
コメント:
ゲーム内のテキストをそのまま使うのもおもしろくないし、テキストは分散していてなかなか思っていることを伝え難いので語りを付けてみた。で、コメントしたいことはいくつかある。
なかなか深くて複雑なシナリオだった。良かったけれど、正直なところ疲れた。 ※引用記号(>)の付いた文章はゲーム内からの引用です。 それらの文章の著作権は全てAQUAPLUSにあります。(C)2003-2004 AQUAPLUS |