キャラクター別レビュー。
河野貴明:
- 主人公。
- 極めてごく普通っぽい男の子だが、唯一決定的に普通と違うのは女の子が苦手ということ。小さい頃から一緒にいるこのみや環は平気みたいだがそれ以外の女の子は全くダメ。
手を触れるどころか近づいてきただけでもダメ。アレルギー。
- このみ・環・雄二とは幼なじみ、愛佳とはクラスメイト。
- 両親が海外出張中で一人暮らし。
柚原このみ:
年下の幼なじみ。
このみ、貴明、環、雄二は小さい頃からずっと一緒にいるご近所の幼なじみ。環と雄二は実の姉弟だが、貴明もまたいつも自分にくっついてくるこのみと自分自身のことを兄妹のように感じていた。
このみ、中学3年生。友達の「よっち」と「ちゃる」は上位ランクのお嬢様校への進学を決めたが、このみは別の学校を選択。貴明と同じ学校への進学を決めたのだった。
このみ、高校1年生。入学したものの一向に進まない貴明との関係。
それを敏感に察知した環と雄二が貴明にこのみへの気持ちを確認してもその場は空振りに終わるが、貴明が中途半端に意識したことで2人の関係はぎこちなくなる。
そのとき2人が考えていたことは全く同じ――変えようとして崩れちゃったら、終わっちゃったらいやだ――そんな不安だった。だから言えない。現状に甘んじてしまう。
だが、それでもほんの少しだけ気持ちが先へ進んでいたこのみは貴明の
> 「このみは妹みたいなもんだ」
の一言を聞いてショック、走り去ってしまった。進むのは不安だけど今のままでいるのも嫌だ……そんなこのみを見て、そして環に押された貴明はこのみを追いかけて告白した。新しい2人の関係の始まりだった。
- 普通だ。実に普通だ。極めて普通の幼なじみシナリオだ。他に表現のしようがない。
そして短い。とても短い。このみって一応、メインヒロインなんだよね? そう疑いたくなる。これはちょっとまずいんじゃないでしょうか。
- このシナリオ、自分の中で最終的に導き出された結論はなんとなく気になっていたお互いを変えたのは幼なじみ2人の後押しだった、ということ。
当人たちにとって主体性のない結論にはあまりしたくなかったんだけど、どうもそうとしか思えなかった。でも、これも必ずしも悪いものだとは限らない。
世の中結構そういうものなのかもしれないから、その実態をよく表現しているのかも? どうにしても自分には幼なじみの女の子なんていないのでこういうケースはわかりませんな。
- このみはもう少し大人っぽくなったほうがいいと思うぞ。
- ちゃるとよっちにはもっともっと登場してほしかった。サブキャラクター重視派としてはあの2人があまり出てこないのは非常に残念だ。
- 攻略はこのみ一筋なんだけど、環と一緒に登場することが多いから同時に進めておくと効率がいい。このみエンディングの他にこのみと環の中間エンディングというかノーマルエンディングみたいなものがある。
このみの姉貴分で恋のライバル。雄二の姉。
遠くの学校へ行っていた環が帰ってきた。「タマお姉ちゃん」と慕っていたこのみは大喜びだが、小さい頃はガキ大将でいじめっ子だった環の帰還(?)にいつもいじめられる雄二は憂鬱、貴明は微妙なところだった。
向坂家の前に女の子3人組がいるのを見かけた貴明はいきなり「お姉さまに近寄るな」と彼女たちに咎められる。
貴明のことがお気に入りの環と全く要領を得ない言い分に呆れた貴明はそれほど気にしてはいなかったが、3人揃って貴明の学校へ転入してきた上に毎日邪魔ばかりするとなっては放っておくわけにもいかない。
そこで「実は私たちは付き合っている」と言い出した環だが、当の3人組は2人のデートを見ても全然信用しなかった。
その後も付き合っている振りを続けていた2人。でもずっと以前から貴明のことが好きだった環はもうこのままではいられなく、もう一度貴明に告白した。
もう一度?……小さい頃の環は遠くの学校へ行ってしまう前にも一度貴明に告白していたのだった。不器用で好きな貴明のことをいじめることしかできなかった小さい頃の環。
今もたいして変わりはないが、ほんの少し素直になることができるようになった彼女は漸くその気持ちを伝えることに成功した。
- 内容としてはそんなに珍しくもないんだが、おもしろく読めた。退屈せずに読んでいるうちに最後までいったっていう感じだった。そんな意味では気に入ったシナリオ。
- このみと対を成すキャラクターでいいお姉さんであると同時に昔からのこのみの恋のライバルでもあるのだが、
シナリオではこのみをかわいがっているシーンが多く、そのあたりの葛藤は特に書かれていない。相手があのこのみだから書くのが難しいのか……?
- ズバリ、環は策士だ。貴明との再会の段取り、前にいた学校の女の子たちをうまく利用してのデート。
後者では環の策士然とした姿は書かれていないけど、ここは策士と見るのが妥当でしょうな。
- いじめっ子で策士の環だけれど、その一方で嫌いな犬を川に飛び込んで助けるなど理屈抜きで人間的なところもあり、
また年下の面倒見も良いので決して嫌われているわけではなく、頼れるお姉さんである。
- 環のいた学校から来たというあの3人組はなんとかならんものか。手が古いというか時代錯誤というか……ん? これってToHeartの色なのかな?
- 年上キャラクターでニーソックスっていうのがちょっと珍しいかも。
- 個人的に最も重要だと思ったことは、別のシナリオで貴明が「タマ姉のせいで女の子が苦手になった」と言っていること。
ということは、ToHeart2という物語の始まりというか諸悪の根源(?)は環ということになるわけであり。
他のヒロインやはたまたゲームそのものを巻き込んだお騒がせの張本人なわけであり。
- シナリオがD.C.P.S.の水越眞子に似ている。
- 攻略は環一筋でどうぞ。
委員長。誰が何と言おうと委員長。いや、誰しもが委員長としか言わない。
ちょっとおとなしめでおっとりさんの愛佳はクラスの副委員長。だけどみんなは「委員長」と呼ぶ。真面目で不器用な愛佳は書庫の整理をしたり、人助けをしたり、いつもせっせと働いている。
でも、異性アレルギー……つまり男の子が苦手。
ふとしたことから貴明は書庫へ通い愛佳の作業を手伝いながら一緒に美味しいお茶を楽しむようになったが、そこで出た話が「2人で協力してお互いの異性アレルギーを克服しよう」というもの。
お互いを名前で呼び合ったり、手を触れる練習をしたりという奇妙な毎日を送るうちに貴明はだんだんと疑問に思い始める。自分たちはいったい何をしているのか。なんでこんなことをしているのか、と。
ある日貴明は愛佳から病気の妹のことと同時に普段の愛佳のことも聞かされた。愛佳の周囲はいつも妹のほうを見ていて愛佳を見てくれなかったこと、
病気の妹に教えてあげた図書室を妹が入学するまで自分の手で守りたかったこと、妹が入学してきたときに異性アレルギーなんていう姿は見せたくないこと、
特技なんかもない自分は人を助けることくらいしかできないと思っていること、
そして「委員長」としか呼ばれない自分はみんなにとって人格のない「委員長」でしかないという卑屈な姿勢……それで全て納得した。全ては妹のため、そして愛佳自身のためだった。
みんながいつも見ている愛佳を動かしていた原動力はプレッシャーとコンプレックスだった。
貴明と2人で協力して活動してきたことと妹が元気になって自分の活動の成果を見てくれることで、愛佳は少しずつ「ダメな自分」というコンプレックスから回復してゆく。
- 愛佳を一言で語ると、ズバリ、非対称萌え。片側で髪を纏めているヘアスタイルがとても好き。
単なるストレートとかポニーテールとかツインテールとかじゃなくてこういう非対称なのっていいなぁ。
密かにひとりで非対称萌えやってるんだけど、同志はいませんか。実はこの属性に初めて気がつかされたのが愛佳だった。
随分前から髪型が偏ったキャラクターは好きだったように思うんだけど、具体的にそう認識したのはこのとき。
さらに性格もちょっとおもしろいし、委員長属性も手伝って愛佳は全く以って問題なし。属性のど真ん中ストライク。愛佳、ばんざいっ!!
- なかなか読み応えのあるシナリオ。このゲームの中では内容が深いほうだと思う。
- キャラクター的にはとても好きなので近くにこういう人がいてくれるのはとても嬉しいかも。だけど、こう育ってしまった愛佳のことを考えるとかわいそうって思う気持ちが先になる。
知り合いに同じようなタイプの人っていたかな、とか考えてしまった。愛佳の生き方もいいと思うんだけどね。でも自分がそうできるかと言われると……たぶんできないかな。
ところで、愛佳はおとなしいのか積極的なのかよくわからないときがあるなぁ。
- 「まわりからどれだけ頼りにされるかで自分の価値は決まる」
そういうことも多いはず。周囲の認識があってこそ自分の存在が安定するというわけで、これは人間が社会的生物だっていうことに繋がるんだな。「我思う、故に我在り」とはなかなかいかないんです。
だけど愛佳の場合は名前ではなく「委員長」と呼ばれることに自分自身の人格を感じられなかったから、認識されて頼りにされるだけではダメだった。
- > 「ちょっとのことで人が助かるのなら、どうしてやらないの」
愛佳の弁。たしかにそうかもしれない。そう言われるとなかなか返しづらいものがあるかもな。
- 最後、全校生徒に「桜がほしい」とお願いをするところは、声を入れたり貴明や全校生徒の動きを詳細に描写したりしてもっともっと表現してほしかった。これはちょっと残念。
- 愛佳の早口言葉はおもしろい。ぜひ読もう。ぜひ聞こう。
- 妹の郁乃はだいぶ歪んでいるけど、まぁ、悪い子じゃない。たしかに病気になると健康な人のことをあれこれと考えて愚痴も言いたくなるというのは事実なんです。
郁乃くらいの言い草は十分にあり得ると思う。そしてどことなく自分に似ているような気もした。
- 攻略では由真が鍵になる。愛佳を選択できないときは由真を選択しよう。友達は大切にしましょうっていうことですね。
十波由真:
来栖川家執事の跡取り娘。
貴明のせいで遅刻した、と思い込んだあの日から全ては始まった。貴明と出会うとき全てが由真にとって運が悪く、飲みたいジュースがちょうど売り切れたり、水道の水をかぶったり、自転車で派手に転んだり……。
最初のうちはそれが気に食わなくて何かと由真の周りに現れる貴明と無茶な勝負をすることに明け暮れる由真。
だけど2人で勝負だなんだとしているうちにいつの間にか一緒に遊んでいるような気持ちになってきたことに気づく。それは貴明も由真も同じ。
その由真の振る舞いを気にしたのは祖父。由真の家系は代々来栖川家の執事であり、その将来が次に約束されていたのが由真だったのだが由真本人はそれを渋る。
渋り始めたのは昔のことではなくつい最近……貴明と一緒に勝負という名の遊びをするようになってからだ。
由真は気づいた。自分に用意された道を踏み外したところにまだ知らない世界や楽しみがある、夢があることに。
そして自分の将来について悩み始めてひとつの決意をする……この勝負で貴明に勝ったら、思いを話そうと。
由真は直情的だけど素直にものを言えない臆病なところもあった。だから自分を奮い立たせるために勝負を利用した。が、それも貴明の気の回しすぎで失敗に終わる。
それからの由真は一変した。眼鏡をかけ口数も少ないおとなしい由真……由真のもうひとつの姿だった。でも自分と勝負をしていた頃の本当に楽しそうな由真を忘れることのできない貴明……。
もう貴明のほうは見ずに予め用意された自分の未来への道を進もうとしていたはずの由真が、あるとき失踪しかけた。2人で遊んだ思い出の場所で由真の姿を見つけた貴明は、
もうこの機会を逃すことはできないと由真に気持ちを伝え、連れ戻した。そして由真は用意された未来ではなく、貴明を選んだ。
- 由真の成長物語。由真と貴明の、ではなく由真のだろうな。
- 本来の自分らしい性格のときと現実を見据えたときの性格とでここまではっきりと違うとなると、場合によっては分裂症疑惑も……。
- やたらと貴明に勝負を申し込んでいた頃の由真は「気になる」と「好き」の区別がつかない状態だったということになるのかな。
- 渡り廊下でガラスを挟んで出会うシーンはとてもいい。あれは気に入った。
- 何気にピンク色の靴などというかわいいものを履いている。
- 愛佳と対を成すキャラクター。よく愛佳が登場してくるし、後半ではかなり愛佳に助けられる。さすが人助けの愛佳。愛佳シナリオとの比較をしてみる。
- 愛佳シナリオ:「アレルギー克服の練習」「相手に触れる練習」
→愛佳シナリオは宣言があって段階的に2人の関係が変化してゆく。
- 由真シナリオ:「果し合いのようだった勝負がいつの間にか一緒に遊んでいる気分に」
→由真シナリオはなだらかに関係が変化してゆく。
比べてみると愛佳の不器用な性格がよく書き表されていると思った。由真と貴明の関係はゲーセンで勝負をし始めたところから変わり始めたっぽい。
- それにしても愛佳が図書室の棚卸を仕切っていたが……図書委員じゃないでしょ。あなたこそお手伝い組じゃないの?
- 攻略は由真一筋で大丈夫なはず。その点、愛佳ほど難しくはない。愛佳の攻略中、4/9に駐輪場で由真の選択肢があるが、あのあたりから由真攻略に切り替えると2人を効率よく攻略できる。
あと、3月中に何週間か行き先選択に由真が現れなくなったりするが心配なく。攻略は順調です。
笹森花梨:
ゴーイングマイウェイなミステリ研究会会長。
ある日書類の山を抱えた女の子とぶつかった貴明はわけもわからぬままにサインする。で、気がついてみると「ミステリ研究会」(ミステリー研究会ではない)の会員第一号に。
断ろうと思って行ってはみるが当の花梨を説得しようにも本人はまるで聞いてくれずに自分の話をどんどん進め、貴明は入部届を取り返すこともできずになし崩し的に入部したことになってしまった。
さて、そのミステリ研の活動は。裏山の探索、怪しい本の発掘、うさんくさい化学実験、UFOとのチャネリング……しかも決まってろくな結果にならない。
さらに花梨はことあるごとに貴明に迫ってくるが、どうやら花梨は貴明が近づいてこない理由は、自分が普通とはちょっと違う変わった女の子だからだと思っているみたい。
そんなミステリ研だけれど、やめてしまおうとは思わない貴明だった。
理科室に発生した不審火。ミステリ研が実験をしていることを知っていた学校側は当然のように花梨を疑うが、花梨と貴明がその原因をつきとめて廃部の危機を逃れ、花梨は一目置かれる存在に。
探索や実験はすれど結局未だに何も見つけていないミステリ研だけど、花梨と貴明は確実に近づいていた。一緒に活動することで
見つけるものはミステリだけではなく、2人はお互いの存在を見つけていた。いつどこで何が起こるか、見つかるか。2人はそんなミステリ研を続けていくことにした。
- 熱い。若さのエネルギーっていうか、一昔前の青春(?)っていうか、とにかく日常が熱い。無駄なことに熱いっていうのはとてもいいことだと思う。
無駄というと語弊があるかもしれないが……「学校で教えてくれないこと」とでもいうのかな? 夢中になれるときになっておきたい。時期が過ぎてそれができない立場や環境にならないうちに。
- 花梨は「変わった子」の域をギリギリではみ出さないあたりかな。これ以上になると近づけないかもしれないけれど、まだ許容範囲なのでこれなら一緒にいて楽しいかもしれない。
でももうちょっと手加減してくれると助かるかも。
- シナリオには大いに疑問がある。
- 花梨は最初から貴明に対して好き好き大好きモードのように見えるんだが、どうして? 結局それがはっきりしなかったような。
- 貴明の入部届を提出していなかったこと。どうして? だましたようで悪いと思ったから? あのシナリオだとなんかそれも説得力に欠けるんだよな。
- ズバリ、シナリオが短い。愛佳や由真の半分くらい? 不審火の事件を1つ解決したから、日付的にも「これからが本番か」と思っていたら……終わってしまった。
拍子抜け。あと2つくらいはエピソードがほしかったな。でもそれじゃ、ミステリ研じゃなくて探偵になっちゃうのか。
だけど花梨はドタバタしているわりにすごい痛快なシナリオもこなせそうなキャラクターだと思うから、やはり惜しかったな。
- 攻略は問題なさそう。ひたすら花梨。
ルーシー・マリア・ミソラ:
宇宙人「るー」。
桜並木に倒れていた女の子。会話は「るー」と「うー」しかなくどこの外国人かと思っていると自称宇宙人で、「るー」という不思議な力を使えるらしい。ただし3回まで。
彼女は自分のことも「るー」と呼ぶし、「るー」は便利な表現のようでいて実はややこしいこと極まりない。
彼女の名前は貴明の言葉、つまり日本語に訳すと「るーこ・きれいなそら」となるらしい。自称宇宙人はさすがにちょっと信じられないが、差し当たり「るーこ」呼ぶことに決めた。
ある日学校へ行くと制服を着たるーこに出会い、留学生という扱いでしかも半ば予想通り貴明のクラスに編入。何が起きたのかわからないが、それよりも不思議なのは周囲の態度。
クラスメイトにもあまり気にされず先生までもがうっかりするとるーこの存在を忘れるような様子で、るーこに対する周囲の認識はまるで空気のよう。いったいどういうこと?
どうかすると貴明自身にもるーこの姿が見当たらないときがあるし。るーこが言うには「るーのことを信じていないときは見えない」ということだが……。
友達と喧嘩して困っている小学生の女の子を助けるためにるーこは「るー」を使うことを決意する。しかし、貴明のために既に3回の「るー」を使い切っていたるーこ。この「るー」は4回目だった。
そして禁忌の4回目の「るー」を使ってしまったるーこは追放……帰れなくなった。何も悪いことをしていないるーこが帰れなくなるなんておかしい、
まだ迎えの船(宇宙船)が来るかもしれないと思った貴明は夜空の観測に明け暮れる毎日。そしてやがてるーこは……母星へと帰っていった。
何日かして学校から帰った貴明を家で待っていたのは、るーこにそっくりな女の子。彼女は貴明の許婚だとかで名前はルーシー・マリア・ミソラという。るーこじゃない。
でも一緒に過ごしたり、遊んだり、困ったりした……貴明と全く同じ思い出を彼女も持っていた。
いったいどうしたというんだ? ここ暫く貴明が見ていたのは過去の思い出の再現された夢だとでもいうのだろうか? それとも……。
- 不条理ゆえに我信ず――このシナリオを一言で語るならばこれでおしまい。
この言葉について、「不条理なこと、つまり理に適わないことなのにどうして信じられるのさ?」という質問を時々受ける。いえ、それは逆なんです。逆というか解釈の読み違いというか。
不条理ではないこと(理に適うこと)は理屈で説明されるので信じる/信じないを議論する必要もない。これは信じる/信じないに関わらず、事実として存在するのだから。
その一方で不条理なこと(理に適わないことや理屈で証明できないこと)はもはや理屈や説明ではどうしようもないので、「あとはあなたが理屈抜きで信じるかどうかだ」ということになる。
不条理だから(不条理ゆえに)理屈で説明なんかできない、理屈抜きで信じよう(我信ず)――不条理ゆえに我信ず――ということ。神の存在なんかがよく例に使われますね。
このシナリオでは理屈はもちろん、感情(感覚、心)でもるーこの存在に納得がいかないかもしれない。
だから理屈も感情も抜きでるーこや「るー」のことを信じられるかどうかが問われている。2つ下に書いた誕生日の件も読んでみてください。
- 一言で片付けないとすると……「理屈や感情じゃないこと」について語っているシナリオ。細かく見ていくと、
- るーこの存在
- しあわせをもたらす四つ葉のクローバー
- 友達というもの(友達のために一生懸命になるのにそれ以上の理由はいらない)
- UFO探し、等々
理屈や感情でつかめないことをあなたはどれだけ信じますか、とプレイヤーに問いかけている。UFO探しなんかは理論的検証なんかもあるから微妙なんだけれど、
信じなければ始まらないということか。
そして信じることに対する警告も呼びかけている。
- いいことばかりを信じればいいわけではない(自分にとって不都合なことも信じるべきときがある)
- あり得ない可能性を信じるな
- 矛盾した信じ方をするな、等々
用意したテーマについて実によく書けていると思う。選択肢にもるーこや友達をどのくらい信じているかということが試されるものが多い。
- ルーシーの誕生日の公式設定は2/30……2月30日。オフィシャルサイトによると、
> 「誕生日は2月30日で間違いございません。2/28(もしくは2/29)から3/1に変わる時、誕生日を迎えています」
ということだが……それって3/1っていうんじゃないのか? いや、それにもしも2/28と3/1の間だったらどう頑張ってもせめて2/29で2/30にはなり得ないだろ。
或いはやはりルーシーは宇宙人で宇宙暦の2/30だとか。いや、宇宙暦まで超越しなくても陰暦だったら2/30はあるよな。
しかぁ~し、暦があろうがなかろうがルーシーの誕生日は2/30なのだ。なぜなら、そういう「設定」だから。公式設定強し。
さて、あなたはどう受け留めますか? こうなったらもう、あとは信じるかどうかです。不条理ゆえに我信ず。
- るーこの言葉の中に少なからず混ざる「るー」と「うー」には様々な意味がある。
- るー:るーこ(一人称)、るーこの種族、るーこの星、神(?)、大いなる力「るー」、等々
- うー:貴明、地球人、等々
大切なのはるーこシナリオを読んでいればプレイヤーがこのるーこの言葉を理解できてしまうという事実。例えば、
「うーはいいうーだ。だからるーはうーのためにるーを使うぞ」
の意味は、
「貴明はいい地球人だ。だから私は貴明のために大いなる力『るー』を使うぞ」
となる。もちろん我々プレイヤーは文脈や話の前後関係からるーこの言葉を理解しているのだが、これでもきちんと言いたいことが伝わってくるものなんだな、と改めて感慨深く思った。人間ってすごいな。
- 殆ど全てのキャラクターが関連してくるシナリオ。直接関わってこないのは愛佳と由真くらいじゃないのかな。このあたりも「友達」という理屈抜きの繋がりを表現するのに一役買っている。
- エンディングまでルーシー・マリア・ミソラという名前が明かされないのはすごい。途中で攻略失敗するとルーシーという名前さえも見ることなく終わってしまう。
ここまでのレビューでも「ルーシー」ではなく敢えて「るーこ」と書いてきたのは、貴明やプレイヤーが相手にしていたのはルーシーではなくてるーこだから。
誕生日の話はオフィシャルサイトに「ルーシーの誕生日」と書いてあったからルーシーなんだろうな。
- 4回目の「るー」を使うときの正解選択肢は「これって、4回目じゃないのか?」ではなくて「るーこを信じる」にしてほしかった。
これが4回目だっていうことくらいるーこは当然わかっているんだから、ここで彼女の決心が鈍るようなことを言うのはあまり好きじゃなかった。個人的な希望というか、感想というか。
- 結局、るーこの言っていた「大熊座から白鳥座へ行く」という話はなんだったんだろう? 銀河系の飛んでいる方向か?……いや、たしかそれは違ったような。う~ん。
- 全キャラクターの中で唯一、春休み中に話が進むシナリオ。
- 身なりは良く、きちんとした服装をしていて好感。長い髪の中にさりげなく着けている花のアクセサリーが女の子っぽい。
- CGは線がシャープで幻想的な絵が多い。他のキャラクターとはちょっと趣を異にするがるーこの性格に似合っている。
- 知っている人にしかわからない表現だと思うけれど、藤子・F・不二雄でいうところのS・F――S(すこし)F(ふしぎ)――みたいなテイストがある。S・F要素はあるんだけれど、
ハードなS・Fではなくそこはかとなく不思議な余韻を心に残す物語。
- 攻略はるーこ一筋で問題ない。ただ選択肢は多いので間違えないように。シナリオは結構長いがよくできているので時間を掛けて読む価値があると思う。
お互いを大好きだけど、両極端な双子の姉妹。
貴明が出逢った双子の姉妹、珊瑚と瑠璃。どうやら瑠璃は珊瑚が大好きで、珊瑚に近づくものはみんな敵らしい。当然、貴明も例外ではない。
2人は学校のコンピュータ室の常連で、しかも珊瑚の正体は来栖川研究所のロボット設計者だった。
一方、瑠璃は勉強も機械もダメだが2人暮らしの姫百合家の家事を一手に引き受けていて、両極端ながらもどうにか日常生活のバランスは取れていた。
珊瑚はかつていじめに遭い、それを見た瑠璃は珊瑚を守ろうとして珊瑚のまわりに誰も寄せ付けなくなる。その結果、珊瑚はいじめによって、瑠璃は人を寄せ付けないことで……2人は友達を失った。
珊瑚と瑠璃はお互いだけがお互いの居場所となり2人は仲が良かったが、どちらも心のどこかでは自分の所為で相手には友達がいなくなったと思っていた。そして2人の決意。
- 珊瑚の決意は「瑠璃に友達を作ってあげよう」
- 瑠璃の決意は「珊瑚の役に立って自分が珊瑚の『一番』になろう」
というものだった。
他人を寄せ付けない瑠璃に対する珊瑚の「友達を作る」は物理的な「作る」、すなわちロボットを作ることだった。
珊瑚の作ったメイドロボが2人の家へやって来ることになったまではいいが、瑠璃は家事という名の珊瑚の隣である自分の居場所を奪われると思い、猛反発。
これでは瑠璃にとっての決意「珊瑚の一番になる」ための居場所がなくなってしまうし、それになにより大好きな珊瑚と自分の間に入られるのが絶対に嫌だった。
珊瑚にとっては自分の約束の実現成果がこのメイドロボ「HMX-17 イルファ」のはずだったのだが、瑠璃は受け入れられずにイルファに怒鳴る。
自己嫌悪に陥った瑠璃は「自分は嫌われ者だ」と思い込んで失踪するが貴明の説得でみんなの待つ家へ戻り、
貴明とイルファも含めた全員が正直な気持ちを吐き出してお互いを確かめることでわかり合った。すれ違うことはあったけれど、誰もお互いを嫌ってなんかいなかった。
- 深い。そして難しい。さらにややこしい。当然、長い。このシナリオのポイントは人間の心――嬉しさや寂しさを感じる心、相手を思う心、
相手の嬉しさや寂しさを感じて寂しさを埋めてあげようとする心。しかしそれが最も悪い方向に発現した――思い込み、そしてすれ違い。
それぞれの感じていることはとてもいいことでとても優しいことなのに、こんなふうにうまくいかないことがある。どうしてだろう。尤も珊瑚と瑠璃の思いはかなり一方的なところがあるのだが……。
- 珊瑚:「友達を作る」と言ってロボットを作ってあげた(自分にできることはこれしかなかった)。
- 瑠璃:他人は珊瑚をいじめるかもしれない、自分がいればいいと考えて人を寄せ付けなかった。
簡単に挙げるとこうなるのかな。優しい気持ちがそのまま優しい結果に結びつかない。人間の心って難しいですね。
この内容だけでは全然レビューが足りていないので、
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- CGはおだんご頭がよく似合っていて2人ともかわいいと思う。髪の色、目、微妙な表情の差異もそれぞれの性格がわかりやすい。
- 予想通り(?)、2人の百合シーンみたいなものがある。このキャラクター設定だったらこれがなくちゃね。
- 攻略は、誰とも仲良くしないで4/9の環の選択肢にいい返事をする。珊瑚と瑠璃は個別に攻略できない。
草壁優季:
ふと思い出した忘れ物を取りに行った夜の学校。そこで出逢った少女、草壁優季。
なんとなく気になった貴明はまた次の夜も行ってみる。またいる少女。誰だろう。どこかで見たような……。
さりげなく現れたり、ふと気がつくといなかったり、不思議な少女。
彼女が気にしているのは流星群の夜。その日に何かあるのか……?
何か思い出せそうで思い出せなくて、少女には秘密がありそうで……そんな2人の夜が過ぎてゆく。
- いわゆる隠しヒロイン。この子についてはこれ以上詳しいことはここには書きません。
- シナリオの感触はすこし不思議でロマンチックな物語。こっちもまた藤子・F・不二雄のS・F――S(すこし)F(ふしぎ)――みたいな感じ。
シナリオのメッセージ性だとか話の整合性だとか、そんな難しいことは考えずに心で感じたほうが気持ち良さそう。この話は好きだった。
- この子、美人だなぁ。個人的には結構好きなほうに入る。
- 攻略は4/14の夜に突然現れる選択肢を逃さないこと。わかりやすいから大丈夫だと思う。
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