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TALK to TALK [詳細]
キャラクター別レビュー。

法月みさき:
愛情を教えてくれる下級生。
世話をしている犬が裕樹のハンカチを汚してしまったことから知り合い、それからずっと裕樹のところへやって来るようになる。 でも彼女自身は思い切れないらしく、それを見兼ねたクラスメイトの梓が裕樹の教室までみさきを引っ張ってきている。 しかし、ヒトではない裕樹にはみさきや梓のその気持ちがよく理解できない。「好き」という気持ちが。
ある日、みさきの姉の茅乃に会った裕樹は既視感にとらわれ、それ以降茅乃の夢を頻繁に見続ける。それはただの夢ではなく、裕樹よりも以前にテストを受けたプロトタイプ、祥平の思い出だった。 祥平の記憶を引きずる裕樹は茅乃のことが気になって付き合っているはずのみさきに集中できず、不穏な仲になってしまう。 それは姉と裕樹の仲を思って身を引く選択をしたという、みさきの愛情でもあった。
まったくもってどうして良いかわからなかった裕樹だが、茅乃から祥平との思い出をしまいこんで結婚するという話を聞かされて自分の頭が少しはスッキリする。そして今度こそみさきと付き合うことを決意する。 まだよく知らない「好き」や愛情を知るためにも……。

  • メインのキャラクターなのかな、わりと丁寧によく書いてあるほうだと思う。
  • 独占欲、嫉妬心、怒り。相手が思い通りにならないことや自分の感情さえもコントロールできないことに苛立つ。そしてときには相手の為に自分自身を傷つけたりもする。 感情は水のように澄んだものだけではなく、それらが複雑に混じり合ってひとつの感情になる。ヒトはこれを愛情と呼ぶのだろう。
    そういう結論だったが……好きな相手に自分だけを見ていてほしいという思い、それも愛情の一部っていうわけか。うん、いいことを言っていると思う。
  • 「愛」と「恋」の違いとかも少しだけ語っていたけど、いいセンスだと思う。
  • キャラクターとしてはこの子は好きなほうに入るかな。素直な清純系でメインっぽいよなぁ。
  • 攻略は「ジュースを買いに行ってやる」「話を打ち切る」を選ぶことに注意。

嬉しさを教えてくれる同級生。
他人と関わり合いを持たない少女。それは興味がないから。 ※川瀬一瑠と比較すると?
笑うこともなく、クラスメイトも嬉しそうな表情は見たことがないらしい。 以前の学校では男の子と2人でアルバム製作委員をしていて、そのときの男の子の言葉、
「アルバムが形として残ることは自分が存在していた確かな証明になる」
「いつか自分がいなくなったとしてもこの写真はみんなに見てもらえるから」
それに心を動かされた素直は男の子と一緒に写真を撮り続ける。
いつの間にかその男の子を好きになっていた素直だが、あるとき彼と好きな女性の2人が並んだ写真を撮ってほしいと頼まれてショックを受ける。 そこに現れたのは茅乃、そしてアルバム委員の男の子とは祥平のことだった……。そして祥平は消え、学校は廃校となり、アルバムが完成することはなかった。 でも、
「二人で撮った写真をみんなに見てもらえるように頑張ろう」
それが素直にとっての「二人の約束」。約束を守るために、それからもずっと素直は写真を撮り続けていた。 そして素直は学園祭で裕樹と一緒に廃校になった写真の展示をして約束を果たす。祥平の記憶を受け継ぐ裕樹と一緒に……。 祥平がいたら、きっと嬉しいと言ってくれることだろう。裕樹はそう思った。 相手のために動ける喜び、自分のために動いてくれる嬉しさ、それを裕樹は感じることができた。
素直にはもうひとつ、約束を守る理由があった。それはいじめられっ子の素直に彼……祥平だけはいじめるでもなく、守るでもなく、普通に接してくれたから。 普通にして普通の子と一緒に普通の生活を送ることのできなかった素直にとって、それはとても嬉しかった。 だから素直の中でアルバムの完成は祥平との大切な約束、絶対に果たすべき大切な約束になった。
学園祭を通じて素直は裕樹に惹かれていき、態度も少しずつ打ち解けていく。そして裕樹も素直のことを放っておけずに積極的に展示の準備をしたり、 なにも自分が得をするわけでもなく損得と快・不快の天秤の理屈では通らない行動をいつの間にか始めていることに気づく。ヒトではない裕樹になんらかの感情が芽生え始めた。 だが、素直は伝えられない、裕樹は自分の気持ちがわからない……なのですれ違いのまま中途半端な関係を続けていたが、祥平に関わるちょっとした事件をきっかけにお互いを「好き」だと言えるようになる。 今までは伝わらなかった気持ちが伝えられて、そして届くということの嬉しさ、気持ちが重なる喜びを裕樹は知り、素直は再認識した瞬間だった。

  • 裕樹には嬉しさという感覚もなかったのか……それは感覚なのか、感情なのか。
  • 理屈を超えて動けること、相手のために自分が動けること……これはある意味で「好き」とか「愛情」の中に入れてもいいんだと思う。 そしてそれが相手に届くこと、好きなものを好きと言って届けられること、その嬉しさ、充足感。 自分を差し置いたり、自分だけではなく相手と繋がることで得られる前向きな感情がある。ヒトの持つ独特な気持ち。ヒトはいつから自分を優先しないことを覚えたのだろう。
  • 「普通に扱ってくれる」っていうのは……うれしいよな、うん。そう思う。そういうの、うれしいんだよ、とても。
  • キャラクターとしてはかなり好きなほう。みさきもいいが、素直のほうが好みだろうな。 本人も語っているが、素直は好きなものを好きと伝えられないようになってしまった、今は素直じゃない子。前は違ったようだが……。

大竹冴子:
楽しさオリジナリティを教えてくれる同級生。
クラスメイトの冴子は下手なのに誰にも内緒でストリートで歌っている。歌っているのはうまくなるためではなく、大好きだから。楽しいから。 その「大好き」にはもうひとつ対象があって、音楽が大好きなのと同じくらい他人を楽しませることが大好き。 普段も明るく性格だし、感情表現の薄い裕樹に対してお祭りや音楽の楽しさを教えてくれようとしたりと行動に惜しみのない性格。
或る歌手の歌が瀕死の病人さえも楽しませていたことを知っていた冴子はずっとその人の歌一筋でやってきたが、ストリートでその歌手の歌を歌っているとお客さんから
> 「あの人の歌をおまえみたいなヘタクソが歌うな」
と言われてさすがの冴子もショックを受けてしまい、自信をなくして歌をやめることにした。でも冴子の歌に不思議な魅力を感じていた裕樹はその歌手の歌ではなく
> 「冴子の歌を聴き続けたい」
と言い、説得する。人を楽しませることが大好きな冴子なんだから、 その人の歌に固執しなくても「冴子らしさ」……その人のコピーじゃない冴子のオリジナリティを聴かせてほしい、と。 それに自分自身がヒトのコピーである裕樹は冴子のオリジナリティが羨ましくもあり、とても魅力的でもあった。
そしてオリジナリティを磨き始めた冴子は、夜のストリートでついにお客さんから初めての拍手をもらうことができた。

  • 楽しさ」という気持ちを中心に教えてくれるシナリオかと思ったらどちらかというと「楽しませる」に近かったみたい。 でも単なる楽しさよりも一歩踏み込んだんだし、それでシナリオも充実したからそれは良かった。
  • 冴子シナリオが始まったときはまさかオリジナリティにまで触れるとは思わなかった。 これは人間と機械、自然と人工物の決定的な違いだと思うから、これをこのゲームに含めてくれたのはとてもうれしかった。感情の表現だけじゃなくて人間の個性にまで触れてくれたのは気に入った。
  • 冴子はよく
    > 「キミらしくていいね」
    と言っていたが、これはオリジナリティの伏線だったのかな。
  • 「好きだから」「楽しいから」という理屈を超えた理由(?)で歌うのってとてもいい。歌に限らず、人間の行動って理屈を超えた内的必然性からくるものが一番強いし。
  • 最後のシーンのお客さんの言葉。
    > 「あんまし上手くはないな。でも……なんか、心にクるもんがあったよ。また聴きたい。」
    そうだよ。これだよ。これなんだよ。冴子の歌、聴いてみたいなって本当に思う。
  • 冴子は最初から好きなキャラクターだったけど、シナリオが進むにつれてその強さに驚いた。 全然お客さんが来なくても、ひどいことを言われても、突然ステージで下手な歌を歌うハメにさせられても、怒ったりしょげたりなんかしない。ときには表面上だけであって陰で泣いていたりもするけれど。 でも、それでも強いと思う。これは自分には絶対に真似できないと思った。でもホテルに行くのはちょっと唐突すぎやしませんか?
  • 冴子という名前は個人的に好きである。
  • 攻略では「おごってもらうのはやめる」にだけ注意かな。あまり冴子相手に遠慮する選択肢ってないんだけれど、これだけは違う。 微妙な選択肢は他にもあるから他のキャラクターに比べて攻略はちょっと難しいのかも。

瓜生樹里:
不安を教えてくれる上級生。
そろそろ受験を控えた樹里は学園祭に参加する意思はなかったが、絵を描くのが好きなこともあり裕樹の提案で絵の展示と似顔絵描きをやることにした。 そして学園祭を大成功させた2人はその後も一緒に帰ったり出掛けたりとなんとなく微妙な関係を続けていた。 樹里のほうは裕樹を好きなんだから付き合える準備はあるはず……だけど2つの悩みがあってそれを言い出せない。 ひとつは進路。遠く離れた学校への進学を希望している樹里は好きだと言った後に離れ離れになって会えなくなるのが怖い。 もうひとつは、目。樹里の目は色を識別できない。だからモノトーンの世界に生きている樹里の絵はいつも鉛筆のデッサンだった。その事実を知られて否定される……自分から裕樹が離れていってしまうのが怖い。
だが日常の付き合いの中からその事実は自然に裕樹に知られてしまう。 それでもそのことを受け入れてくれた裕樹の言葉に樹里の不安は霧消し、これからもお互いがずっと近くにいることを約束する。
ヒトではない裕樹は「言わなくてはいけないけど言えない」という念に悩むことは少なかったが、 樹里はずっとその不安を胸に裕樹には計り知れないほどのつらい毎日を過ごしてきたのだ。

  • テーマは不安だったか。最初は「過去」がテーマなのかな、とも思ったんだけどそれはちょっと色が薄かったからこのコメントからは外した。 人間の持つ不安という要素、裕樹にはやはりないのか。まぁ、たしかに損得と快・不快で判断するロジックならばそれはあり得ないが。
  • このシナリオには「恐怖」っていうテーマもあったと思うけれど、それは不安の中に入れていいんだろうと解釈しておく。
  • 不安は人間が人生の中で持つ感情としてはかなり大きな位置を占めると思うから、このテーマを取り入れたのも良かったと思う。 でもいまいち樹里の不安な様子が伝わりにくかったような気がする。
  • 樹里のテーマソング「White Light」は裕樹の含めた一般の人の持つ光の認識、「七色の光」に対照させたものだろうか? オープニングにもあった、
    > 「光がきれいだね。……こんな表現しかできなくてゴメンね」
    これって計り知れないほど、ものすごく重い言葉だったんだな。改めて感じ直した。

矛盾寂しさを教えてくれる同級生。
他人と関わり合いを持たない少女。それは失ったときが怖いから。 ※白倉素直と比較すると?
クラスの中で浮いている一瑠を見ているのが心配で学園祭実行委員になった裕樹だが、女子の実行委員である一瑠は殆ど手伝ってもくれない。 でも裕樹が声を掛ければ一緒に居残ってくれるし、けがをすれば心配もしてくれるし、なんとなく少しは雰囲気が変わってきたような。
学園祭が終わってしまえば一瑠との接点がなくなることに気がついた裕樹はやや強引に一瑠と付き合うことにするが、しかしそれも「システム」からの指令で一旦引き上げることになり、最悪の形の別れ話になってしまう。 だけど本当は裕樹のことが好きになっていた一瑠は、裕樹がいなくなる直前になって自分のことを話してくれる。 今までに経験してきたつらい別れや失望、寂しさ……もうそんなものを味わいたくなかった一瑠は他人との関わりを絶つことを決め、強がって他人を寄せ付けないでいた。 でもひとりでいることは別れや失望に劣らないくらい寂しいことだった。 一瑠の以前の恋愛相手は教師、そして今回は裕樹……手に入らないものばかりを好きになる運命に戸惑いながらも「帰ってきたら……」という実現性の薄い約束をする。 そしていつしか一瑠のことが好きになっていた裕樹は、そんな一瑠を見て初めての涙を流した。ヒトではないのに……。

  • 結局のところ、 裕樹は寂しさっていうものをわかったのかな。たぶんわかったんだろうな。それが涙だと思おう。 そして寂しさの裏に当たる人間の温かさもきっとわかってくれたはず。
  • このシナリオで裕樹は人を騙そうとする。これは重要だ。プロトタイプである彼にそんな判断能力はあったのだろうか。これは裕樹がものすごくヒトに近づいた瞬間なんではなかろうか?
  • 別れ際の実現し得ない約束っていうのは結構よくある話だ。たしかにしたくなる。なんでかって言われると困るな。 機械じゃないから、人間だからっていうのは正しい答えなのかもしれないね。機械だったらそんな理不尽な約束などしないかもしれないが、人間だから……。
  • 寂しいのに強がる、手に入らないものをほしくなる、叶わぬ約束をする……そんな人間の矛盾を纏めて書いてあるのは良かった。 ひとつじゃなくて纏めて書かれると説得力があって感服。一瑠のBGM「二律背反」はそういうネーミングだったんだな。曲についてはくすんだトーンを持つジャズっぽい感じも「らしくて」いいね。
  • キャラクターとしては好きだけれど実際に一緒にいたら疲れるだろうな~。好きだけれど一緒にいるのはちょっとね……これも矛盾とか二律背反っていうのかな?
  • 一瑠は左利き。これもイレギュラーっていうイメージがして矛盾とか寂しさに似合っている気がするんだけれど、 シナリオに一役買っているのかな? 本文には表現されないので絵をよく見なければ気がつかないんだけれど……。

荻谷:
希望を教えてくれる親友であり同級生。
裕樹が転入したクラスの隣の席に座っている男の子。 一緒に登下校したり、他愛のないおしゃべりをしたり、騒いだり、食事をしたり、他のクラスメイトとの仲を取り持ってくれたり……良くも悪しくもいろいろと面倒を見てくれて、クラスで一番の仲になる。
でもヒトの感情を理解できないと判断を下された裕樹はテストを終了することになり、荻谷にまともな挨拶もできないまま学校を離れることに。 そんなとき裕樹は理由もわからずに携帯電話のボタンを押し、荻谷に電話をかける。夜中の電話に出てはくれなかったが、翌朝にかけてきてくれた電話が裕樹には嬉しい。そう感じた。
裕樹を含めたプロトタイプの管理元である「システム」の人間がやってきたが、しかし裕樹は戻りたくないという自分の中のはっきりとした気持ちに気づき、そして「システム」の人間に対して「戻りたくない」と逆らう。 裕樹が初めて「システム」の人間に逆らった瞬間。自分の気持ちと意思で判断した瞬間。 裕樹は「ヒトの感情を理解できるようになった」とは思っていないが、いつの間にか「ヒトの感情を感じることはできるようになった」のかもしれない。
「システム」に戻った自分はどうなってしまうのか。そんな不安もたしかにあるが、それと同時に、
「もしかしたらまたここに戻って来られるかもしれない」
「また荻谷と楽しい生活をしたい、できるかもしれない」
そんな不確定な未来を前向きに受け留める希望を感じていた。

  • 希望って感情なのか、と一瞬思った。 だけど不確定要素に思いを馳せるというのは値をロジカルに処理する確定論的思考ではあり得ないような気もするし、やはり感情のなせる業なのか。
  • 感想はいろいろある気もするが、とにかく、ここまでヒトの感情かそれに近いものを感じている裕樹が回収されてしまうのがどうしても悔しかった。 親友のことを強く想ったり、自分の生活を振り返って懐かしんだり、そんなことができるようになった裕樹なのになぜ回収されなければいけないのか。どうしてもそれが悔しい。
  • キャラクターとしては。
    • 荻谷は……好きでも嫌いでもないといったところかな。でも1人くらいはこういう友達がいてもいいかも。
    • 裕樹は……結構好きだ。こういうヒト(?)が近くに来たらきっと友達になりたいと思う。

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