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120円の春 \120 Stories [詳細]
シナリオ別レビュー。

120円の冬 \120 Winter/小雪:
久しぶりに乗った田舎へ向かう電車の中で奇妙な女の子に出逢う。どうやら切符と、ついでにコンタクトレンズも落としてしまったらしく一生懸命に探しているが、一向に見つかる気配なし。 新しく切符を買ってあげると言ってもダメだし、行き先を聞いても教えてくれない。かといって家出ともちょっと違う風だ。 漸く聞き出すと、どうやら「行けるところまで、行ってみたい」と……今はもうなくしてしまった120円の切符で。仕方なく彼女に付き合うことにした。
主人公はかつての自分が同じことをした記憶を思い起こしていた。可能性って、未来って……子供だった頃の自分はそれを計り知れないくらい大きく、そして遠いものだと感じていた。 でも人は大人になるにつれて、限界と現実を知る。できることとできないことがわかってしまう。 自分には何ができるのか、どうすればいいのか……子供の自分がよくわからないままに始めたのが、手元にあった120円で手に入れた切符でどこまで行けるかという冒険だった。 そしていま彼女も同じ思いを抱えている。
――120円の切符。犯罪。見つかりそうになる。隠れる。やっとたどり着いた見知らぬ駅。看板への落書き。それは自分がここへ来たという確かな証――。
――初めて来た土地。そこで見つけたもの。赤い信号。緑のネオン。それさえも星のように綺麗に輝いて見えた――。
それは自分に「できた」ことだった。そしていま、彼女にも。

  • 120円で試す自分の可能性
  • 主人公と女の子の共通点は「自分自身に対する不安」。
  • このままだと何かに流されそうで、でも何をしていいのかわからなくて。何かしなくちゃいけないような気がするけれど、何もできない不安。わかるなぁ。
  • 小雪の意図を理解する以前の主人公と彼女のやりとりは、大人と子供の会話。 これを小雪側から見ると「大人って子供のことを全然わかってくれない」……ここのシーンはそういうことも表現しているのかな。
  • 自分の力でたどり着いた見知らぬ土地で見る信号やネオンが星のように綺麗に輝いて見える。その描写が達成感によるものだけではなく、近視や乱視で物理的にもそう見えるというのはうまいと思った。 自分は軽度の近視性乱視なので試しに眼鏡を外して信号の絵を見てみたら、本当に闇に赤や緑の星が浮かんでいるように見えて主人公や小雪との一体感を味わったような気がした。 視力の低い人はぜひ試してみてほしい。
  • 寂れた田舎にポツンと立つ夜の信号を一心に見つめる姿はかなりシュールで、そこには不気味さも漂う。よく見るとあの絵はシュールレアリスムに通ずるものがあってちょっとこわい。
  • かつて自分が到達した駅を超えるというのは「過去の自分を超える……またひとつ成長する」という意味にも受け取れる……?
  • 「自分はここ(この駅)までだったから、彼女にはここを超えてほしい」という展開にしたらもうひとつ別のシナリオが作れそう。
  • 結局、小雪は何歳なんだ? 子供料金で通用するのだろうか。
  • このシナリオはなんていうか……格好いい。そう、格好いいって思う。感傷的なんだけれど、やっぱり格好いい。 実際に女の子がこういうことをしたいと思うのかどうかはよくわからないけれど、男の子はこういう冒険ってちょっと憧れるんじゃないかな。少なくとも自分はやってみたい。
    > 「俺はここまでだった……まだ行くか?」
    と問われてうなずいた小雪のために協力する主人公。2人で検札の見張りをするシーンなんかとても格好いい。 協力したのは小雪のためだけっていうこともないのかもしれないけれど、それにしても、うん。すごく格好いい。

120円の夏 \120 Summer/なつみ:
暑い夏の補習の日。ジュースを飲もうと近づいた自動販売機に佇む女の子。聞いてみるとお金を入れたのはいいけれどジュースが出てこないらしい。 よし、こういうときにやることといったら決まっている……たたく!!……出ない。そうだよな。そんな簡単に出れば苦労はしない。 それじゃ、今度は2人で一緒にたたいてみる。ん?……出た。しかも入れた120円も戻ってくる。いろんな自動販売機で試してみると、
  • 120円を入れて
  • 2人で一緒にたたくと
  • 2回だけ
出てくるらしい。そんな不思議なチカラ、それが彼女と知り合うキッカケだった。
あちこちで不思議なチカラを試し続けるうちに彼女は「これってやっぱり悪いことなんじゃ……もうやめようか」と。2人の気持ちがすれ違い始めたとき、不思議なチカラは消えた。もうジュースも120円も出てこない。 その日の別れ際、このままではもう会えないかもしれないとわかっているのに引き止めることができなかった。一緒にいるためのキッカケや理由である不思議なチカラが消えてしまった自分には何もできなかった……。
暑い夏の補習の日。補習をサボって行ってみる。あの自動販売機へ。…………いた。キッカケを作ってくれた不思議なチカラはなくなってしまったけれど、大丈夫。自分からキッカケを作ることができそうだから……。
  • 120円で見つける小さな勇気
  • 主人公と女の子の共通点は「キッカケを作る勇気が出せないこと」。
  • たくさんの人がいるこの世界で特定の人と出会えるのは運命的なことで、その出会いのキッカケについて語っているシナリオ。「キッカケ」が片仮名なのはシナリオ中の表記に倣って。
  • このシナリオで主人公となつみを繋ぐキッカケになった要素は、
    • 夏(=ジュースを飲みたくなるような暑さ)
    • 不思議なチカラ
    • 補習
    • 消極性
    • 不思議なチカラの消滅
    上の2つは2人が出会うキッカケ。消極性は共通点を経て2人が仲良くなるためのキッカケ。 補習はその両方? 不思議なチカラの消滅は「チカラ」という外的理由に頼らずに2人が繋がるためのキッカケ。 これらの巡り合わせで2人は繋がったのかな。
  • 「冬」に比べるとちょっと物足りない気がした。内容が深いシナリオが好きだからかな。

120円の秋 \120 Autumn/???:
120円かけてやって来た隣町。たった5分しか掛からずに行けるこの町で俺の価値観――すなわち俺ジャッジを揺るがす出来事に出逢うとは。
なんか知らないけど、変な奴発見。バナナの皮で滑ろうとしたり、落ちてくる鳩の糞に向かって突っ込んだり、とにかく変な奴を発見。 なんでも「明日から10年に1度のラッキーだから今日のうちに不運を貯めておく」らしい。そうするとその反動で明日からのラッキーが大きくなるんだとか。なんだか目が離せないから付き合うことにした。 今朝の占いでも「人助けは吉、長い縁が築けそう」とか言っていたし。……これって人助けか?
一日中かけて不運を貯め込んだ俺ジャッジ的変な奴。見事に財布までなくしてアンラッキーを極めたんだけど、ところで明日解放されるそのラッキーをいったい何に使うんだろう。 宝くじ? 嘘っぽい。限りなく嘘っぽい。でもたしかに、すごいラッキーの使い途なんて言われてすぐに答えられる人なんていないのかも。
宝くじ売り場の脇に寝泊まり。明日ここへ来るまでにラッキーを無駄遣いしたらいけないから。 それで漸く買った宝くじも訳があって手放したんだけれど、なんだか楽しそうにしているあの変な奴を見ているともう少し付き合ってもいいかなって思う。 まさか、これがあいつにとってのラッキーの始まりなのか? あと、俺の「長い縁が築けそう」って……そ、そういうことだよな。

  • 120円でつかむ運と運命
  • 主人公と女の子の共通点は「ある日突然やってくる大きな変化 」。
  • 運を貯めるとか、無駄遣いするとか、誰もが一度は考えたことがあると思う。確証はないけれど、だからこそ気になるんだよね。そこを題材にしたシナリオはおもしろい。ネタがネタだけにドタバタ。 不運を貯めるっていうのは……やったことがある人、いるのかなぁ? いたら教えてください。
  • クレープ代に120円足りない……ここでまた120円ネタが出てくるとは思わなかった。ちょっと気に入った。
  • 思いつきの「宝くじを買う」という嘘で泊まり込みまでするなんて……あ、あり得ない。しかも秋って結構寒いよ?
  • で、この子って誰なの? スタッフロールだと「秋さん」なんだけれど(後に別作品中では「秋子さん」と呼ばれることも)。

120円の春 \120 Spring/葉月:
アルバイト先のクレープ屋で知らない客からもらった宝くじ、これが大当たり。ちょうど仕事にも現実にも疲れを感じていたところだし、思い切って田舎へ引っ越して趣味三昧な生活を送ってみよう。そう決心した。
ところが引越し先の古びた空き家には居ついている女の子がいて、はじめは仲が悪かったものの、しばらくするといつの間にか自然に近くにいるようになった。 しかし俺の計画は台無しだ。試算では毎日の食費は240円にしなくちゃいけないはずだったのに、今は葉月が一緒にご飯を食べている。これじゃ、半分の120円だ……。
平日の昼間に家へやってくる彼女は……学校へ行っていないようだ。どうやら療養中で一時的にここへ来ているらしいが、理由はそれだけではなく引っ越してきたこの土地や友達に馴染んでいないんだろう。 両親もいないことが多く、寂しい思いをしているようだ。だからここへ来ているらしい。ダメだ、ここへ来ては。俺は現実に馴染めなかった人間だ。そしていま、葉月はその俺のところへ来て現実から離れようとしている。 ダメだ、来てはいけない。葉月はこんな閉じた空間にこもるんじゃなくて、開いた世界へ出て行くべきなんだ。 なのに、なのにそれを言うのもつらい。現実に馴染めずに独りの世界に入ることを望んだ俺だったが、2人で一緒にいたり、遊んだり、食事をしたり、誕生日を祝ったり……そうするうちに、 今ではもう葉月がいてくれることがうれしく思えるようになってしまったから……。そしてその週末に葉月は帰っていった。
町へ帰った葉月が遊びに来てくれた。そして俺はもう一度決心した。町へ帰ってまたやってみよう。現実の世界で誰かの傍にいたり、誰かに傍にいてもらうのも悪くないかな、と。帰ろう、葉月のいる町へ。

  • 120円で知る人の温もり
  • 主人公と女の子の共通点は「現実に馴染めなかった人間」。
  • どこに120円が出てくるのかが暫く疑問だったけど、120円を葉月にあげる、自分は120円で我慢する。そういうことなのね。120円で始まる人とのふれあい。
  • このシナリオは我々ゲームプレイヤーに対する警告なのか? でもたしかにその通り。ゲームをやってこもってばかりいると……ねぇ。自分もゲームをやりつつ、散歩とかの外出は欠かさないようにしているし。
  • ゲーム三昧の計画なのに電気の通っていないところへ引っ越すって……たしかにこのシナリオで言うように通せばいいんだけれど、その発想にちょっとびっくり。
  • 最後の章でゲーム内の鍛冶屋のサクラがレベル93で、章のタイトルが「レベル94」。主人公は1つ大人になって町へ帰っていったというわけで、このセンスは好きだ。いいねぇ。 あと、後半の章は人の温もりを思わせるタイトルが多くなっていて、これには意味があることがプレイ後にはよくわかった。
  • 個人的にはあまりいいシナリオだとは思わなかった。「冬」、「夏」、「秋」のほうが興味があった。特に「冬」。
  • このシナリオだけ他よりも長い。普通の速さで読んで2時間くらいはある。

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